空模様は、みぞれ雪

アイドルマスターの話をします

アイマスP辞めた話

 お久しぶりです。表題にもある通り、2023年の1月をもってP辞めました。今までは嫌なことがあっても楽しいことや嬉しいことがあってどうにかやってこれましたが、耐えきれなくなり、辞めました。

 辞めてから3か月、心が落ち着いたので、こういうブログを書くようなスタンスの人間がPを続けるとどうなるか、結末を提供すべく筆をとってみようと思います。

 ネガティブな内容なのでアイマス楽しくて仕方ない人にとっては不愉快極まりないブログになります。その点のみご了承ください。

 

 

 

自己紹介

 まず私がどのような立場でアイマスに触れてきたのかをご紹介します。

 担当は三船美優岡崎泰葉、白雪千夜、GBNS(ユニット単位)でした。白雪千夜以外についてはそれぞれ記事を残してあるので、興味のある方はそちらも併せてどうぞ。

 2017年の2,3月頃から6年弱、デレを中心に触れていました。その間、多少の波はあったもののアイマス以外ほとんど他のコンテンツには触れていませんでした。

 デレステから入り、音ゲーも好きだったのでその部分も楽しかったのですが、テキストを読むのが好きでした。なので、デレステから入ったが、モバマスもそこそこやりました。

モバマスさえ続いていればなあ…

テキストを読むためにやっていたので、デレステのスコア編成などは全く知りません。むしろ煩雑にすら感じていました。デレの話をしようとして一生スコアタの話をされると辟易してしまいますよね。

 

P引退の決定的な原因

 さて、本題に戻ります。

 私がPを辞めようと思った決定的な出来事は、2022年のデレステの三船美優さんのカードの実装でした。

 私はガチャガチャの運が悪いので、天井しました。担当アイドルのテキストを読み逃すのはありえないので。しかし、数万円と引き換えに入手したテキストの中身は包み隠さず言えばゴミです。お前が担当だからどうこう以前に、人間としての美優さんの尊厳を踏みにじっています。信じられない気持ちで、運営にお気持ちも送りました。迷惑かもしれませんが、何か起こるかもと薄い期待をしてこのような返信をいただきました。しかし、結果として提供されたのは、少ししてから配信されたクソみたいに舐めた営業コミュ。決定的に冷め切っていた熱が完全に消えた瞬間でした。

 

何が嫌だったか

 ここまでボロクソに言ったからには、テキストの何が気に食わなかったのかを説明する義務があるでしょう。

 最も不愉快だったのが、三船美優の目指すアイドル像とあまりにかけ離れたカードが、最悪のタイミングで実装された、ということです。

 これは私の過去の記事により詳しく書いているのですが、三船美優さんはアイドルとして再出発のタイミングでした。flamme martiniでの活動を経験し、改めて自分がなりたいアイドル像を模索していました。しかし、彼女は過去に「ファンに寄り添うアイドル」になりたいと明言しています。この方針は活動当初から示唆されており、明言されてからもほとんどブレることはありませんでした。

 改めてなりたいアイドル像を模索する段階で、再びそのような話が来るのかと思ったら、なんとコスプレです。はっきり言って理解不能です。

 アイドル像を再び模索するこのタイミングでこれを出すことの意味はあまりに大きく、もう引き返せないように感じました。この後にどんなものが出ても整合性が取れず、挽回できません。明らかにライン超えです。しかもその後に出された営業コミュは完全にその方向でした。もう、私がプロデュースしていた三船美優さんはいないのだと感じてしまいました。

 

ダメージが大きかった理由

 これを不愉快に感じさせる要因が他にもありました。

 それはモバマスのサ終です。『レッド・ソール』や【こころ、酔わせて】はデレステ発祥ですが、それまでの三船美優を描いてくれたのはモバマスです。先ほども言及しましたが、三船美優さんが目指していたアイドル像は、モバに描かれてきた経験を通じで形成されてきました。特に【ふぁいと一発】などに顕著です。鎌倉アイプロ、天藍のカンツォーネ、心縛のアルケミスト、心染めし春(特訓前)など、私が好きな三船美優はモバで形作られてきました。

 そしてそのタイミングで公開された10周年アニメでは以下のようなメッセージが発されました。「別々の世界線だから、モバ消えたらモバのアイドルは消えます!笑」

 好きだった三船美優が消える。そして唯一残っていたデレステの美優さんは過去の経験をまるっと無視されてしまっている。そこにどのような価値を見出すことができるでしょうか。

 モバマスのサ終とそれに対する公式からのメッセージに絶望し、もうこれ以上はついていけないと判断しました。

 

他にも溜まっていた鬱屈

 他にもデレに対する不満は色々とありました。もう忘れてしまったものも多いですが、以下に羅列していきます。

  • 出番格差。いまさらかもしれませんが、普通にイラつきます。
  • 美優さんソロ2曲目がずっっっと先延ばしにされています。なんで…
  • くだらない総選挙。せめて選挙の順位に応じて出番なりを提供するべきだと思います。
  • デレステのゲーム性一辺倒な方針。音ゲーやスコアタ優先でコミュは二の次、といった印象を受けます。
  • エモ消費。UNIQSの扱いは、世間が「エモい!」と言いそうなことを連発しているだけに感じます。くだらなすぎです。
  • コンステが最悪でした。座席システムについては、私自身がサッカー観戦もするし観劇もしたことがあるので別にいいと思うのですが、あのライブでは主役はももクロ広瀬香美です。デレマスの周年のタイミングで行うにはふさわしくないです。
  • 10周年アニメの泰葉の扱い。あれだけ予告で蒸機公演を押し出しておいて、本編ではごくわずかな出番に留まるのはどういった了見だったのでしょうね。サ○ゲは最高ですね。
  • 肌感の話ですが、コミュの話ができるオタクが減った気がします。私のようなタイプはやはりどこかで離れていってしまったのでしょうか。

 

終わりに

 意を決してPを辞めましたが、辞めてよかったです。前述しましたが、私はアイマスをやっていた間はほぼほぼアイマスしかやっていませんでした。時間もお金もだいぶそこに割いていました。

 アイマスを辞めてからはそこに使っていたお金も時間も浮いたので、元々あった他の趣味にお金を使えるようになりました。

 サッカー観戦、映画鑑賞、読書などが好きなのですが、いずれも時間が必要なコンテンツです。そのための時間が捻出でき、さらにサッカーは現地観戦に行くお金もできました。

 アイマス一辺倒だった頃より、間違いなく生活が豊かになりました。心底辞めてよかったと思います。

 ただ、担当アイドルのことは今でも大好きです。まだ付き合っているオタクたちの話を聞いていると、たまに少し悲しくなってしまいます

GBNSを「担当ユニット」とした話

こんにちは。

モバマスのサービス終了でしばらくメンブレしてしまったオタクです。本当に辛くて悲しいことですね。これについて色々書いてしまうとまたメンタル削られてしまいそうなので、それはしません。

今回は前々から文字に残そうと思っていた、自分にとっての「担当する」という行為と向き合った話、そしてその結果GBNSを「担当ユニット」とした話をします。全部自分語りです。後で自分が読み返して「この時はそんなこと思ってたのか〜」と思うための備忘録みたいなものになると思います。

 

【注意】

1人のアイドルマスターのプレイヤーとしてのスタンスを語るだけです。他のスタンスを否定したりする意図は全くありませんので、よろしくお願いします。

私はアイドルマスターは文字通りのロールプレイだと思っています。従ってここで言う担当など概念の考え方や自らのプロデューサーという肩書きもその一環として捉えていただきたいです。

 

 

初めに

私は現在担当アイドルとしては三船美優さん、岡崎泰葉、白雪千夜の3人を抱えており、GIRLS BE NEXT STEPを担当ユニットとしています。しかし、最初からこのメンツでアイドルマスターをやってきたわけではありません。そもそも私がこのコンテンツと出会った段階ではまだ白雪千夜はこの世に存在しなかったわけですし。

さて、「担当する」という行為について考えるために、自分の担当歴について振り返ってみようと思います。私は初めから担当の定義やプロデュース方針などを考えていたのではなく、月日を重ねることでそれらを獲得したからです。以下、時系列で追っていきます。

 

担当遍歴1人目 三船美優さん

私が初めに担当アイドルとして抱えたのは三船美優さんです。アイドルマスターを始めてから少しして、このコンテンツのオタクは自らのことをプロデューサーと称して、好きなアイドルは担当アイドルと呼んでいるのだろうということに気がつきました。まずは自分も好きなアイドル、もとい担当アイドルにできるアイドルを探してみようと、色々なアイドルを片っ端から試してみることにしました。デレステで引いたアイドルのコミュを読んだり曲を聴いたり、モバマスシンデレラガールズ劇場を読み通して気になったアイドルの中でも安価なカードをフリートレードで迎えてセリフを読んでみたりと、手を変え品を変えアイドルに触れてみました。

その過程で特に気になったアイドルは、北条加蓮、関裕美、そして三船美優さんでした。そしてその中で担当アイドルとして美優さんを選んだのは、「自分が干渉することでこの人の成長を促すことが一番楽しいだろうな」という思いからでした。加蓮や裕美についても同じようなことができるとは思うのですが、その時点での美優さんは2人に比べてよりPへの依存度が高く、そこからの成長を果たしてほしい、その手伝いをしたい、と思ったことを覚えています。美優さんについて少し詳しく話しているレッドソールの記事を見てもらえると、何がしたいのか少し見えるかと思います。

当時の私は、担当アイドルは特別なアイドルでならなくてはならず、1人であることが望ましいとさえ思っていました。そしてこの考えのもと、数年間アイドルマスターと付き合うことになります。その結果、他のアイドルにはあまり目を配ることなく、美優さんのことだけを考えてアイドルマスターと向き合うことになってしまいました。今にして思えば、かなりの機会損失な気もします。しかし、そのようなスタンスで数年間過ごしたからこそ、今の担当アイドルにも出会えたのだと思います。このスタンスを脱却して、どのように2人目の担当アイドルを迎えたのか、お話しします。

 

担当遍歴2人目 岡崎泰葉

私が2人目に担当としたのは岡崎泰葉ですが、彼女を担当とするまでには長く間が空きました。というのも、先述のスタンスでアイドルマスターを遊んできた自分にとって担当アイドルは美優さんだけを指す言葉で、そこから拡張しようという考えもなかったからです。

しかし『ほほえみDiary』のイベント以降、高森藍子をすっかり好きになってしまいました。以前から顔も声もめちゃくちゃに好みで、特に歌声が大好きでライブに金子さんがご出演されていると毎回喜んでいました。そして『ほほえみDiary』のコミュでのインディゴ・ベルとしての活動がかなり好きで、他のコミュを読んでみても藍子がアイドルとしてやっていることもかなり好きで、もしかすると今こそ担当アイドルを増やす時ではないのか、と思いました。

今までロクに他のアイドルと向き合ってこなかったことを後悔しつつ、では美優さんの他に担当アイドルを増やすとすると、藍子でいいのかと一度再考することにしました。自分は何を求めて美優さんを担当アイドルとしているのか、と立ち返った時、「私(P)の干渉によって成長を促したいと思うアイドル」だから美優さんを担当としていることに気付きました。アイドルマスターを始めた頃に加蓮でも裕美でもなく美優さんを選んだ理由であり、自分にとっての担当アイドルの定義がこれであることをこの時初めて自覚しました。そしてその定義に当てはめたとき、藍子はそれには当たらない、というのが私の答えでした。ただのめっちゃ好きなアイドルです。今も藍子ちゃん大好きです♡

 

しかし、藍子を担当アイドルにするかどうか思案したことは私に大きな大きな変化をもたらしました。担当アイドル増やしてもいいんじゃないか、という考えがようやく私の中にも生まれ、色々なアイドルを改めて見てみようと思うようになりました。そうしてまた色々なアイドルを見ていく中で出会ったのが岡崎泰葉でした。

美優さんの成長は、「過去の克服」と「自己愛の獲得」の二つの要素が大きく、その二つが私は特に好きです。そして泰葉はこのうち「過去の克服」を課題として抱えていたアイドルでした。そしてそこから前に進んでいこうとしている姿にグッときて、是非ともこの子を担当アイドルとしてより前に進んでほしいと思うようになり、泰葉を2人目の担当アイドルとして迎える運びとなりました。

 

担当遍歴 GIRLS BE NEXT STEP

泰葉を担当として迎えて改めて彼女のカードを集めたりする中で、GIRLS BE NEXT STEP(GBNS)に出会いました。もちろん存在は以前から知っていました。そして改めてこのユニットと向き合った時、このユニットが泰葉にとって決して欠かすことのできない超重要なユニットであると思いました。GBNSがあるから、泰葉は仕事だけでなくプライベートを楽しむことができ、彼女が過去に取りこぼしてしまった「普通の女の子」としての経験をアイドル岡崎泰葉として経験することができます。そしてそんな仲間と一緒のユニットだからこそ、泰葉はアイドルとしてさらに前に進むことができます。等身大の人間としての岡崎泰葉も、アイドルとしての岡崎泰葉も、GBNSがあれば自分の手を離れえたところで「自発的に」前を向いて歩むことができると確信しています。

しかもユニットメンバーについて見ていくと、いずれもめちゃくちゃ良い子で好きな子たちでした。裕美は始めたての頃から知っていましたが、ほたると千鶴と一緒に改めて向き合ってみると、3人とも私が美優さんのところで重要視していた「過去の克服」や「自己愛の獲得」という要素を抱えていました。そしてこの3人にとってもGBNSは前に進む原動力になるユニットだと思います。

ここで私は悩みました。ほたる、千鶴、裕美の3人を担当アイドルとして良いのかどうかについてです。先述の通り、3人には要素として美優さんや泰葉と共通するものがあり、実際にそのような点における成長が描かれています。そしてその成長には私も少し関与したいとも思うようになりました。

しかし、その成長に関与したいという思いの裏にはそれが泰葉の成長にもつながることを期待する少し打算的な面があることも確かです。彼女たち3人の成長に泰葉が刺激を受けてさらに前に進む契機になればいいなという思いもあります。打算的な思いを抱いたままプロデュースできるのかどうか、私としては全く自信がありません。

そして何より、美優さんや泰葉ほどこの3人の成長の先のビジョンを考えることができなかった、というのが担当アイドルとしなかった理由です。美優さんに対しても泰葉に対しても、成長を繰り返してたどり着いてほしい場所があります。美優さんは、月の光のように柔らかくファンを照らしていくアイドルに、泰葉はファンと一緒に歩みを楽しんでいけるアイドルになってほしいという思いがあります。そのためにこんな仕事をしてほしい、このアイドルと組んでほしい、などそこに至るまでの道筋も考えています。もちろん2人の志向を何よりも優先するのが私のプロデュース方針ですが、プロデュースする以上は2人が道に迷った時に先を示すことができるくらいには明確なビジョンがありました。しかし、千鶴と裕美に対してはそのようなことがあまり考えられなかったのです。当時彼女たちが実現していたことがもうゴールに思えてしまって、それ以上何かやれることがあるのか、私には分かりませんでした。ほたるはトップアイドルという明確なビジョンがあるのですが、私のプロデュース方針とは少しズレてしまうと思うので、これもまた積極的にめちゃくちゃやりたい!とはなりませんでした。

個々人に対して明確に先を示すことが考えられない、でも3人の成長は泰葉のためにもなるし、個人的にも好きなので見ていきたい。そう考えたときに、GBNSというユニットがこれを実現してくれることに気がつきました。GBNSを親友である4人が仲良く活動し、そして人間としてもアイドルとしても成長する場として提供する。これが答えだという結論に至りました。そこで、GBNSを担当ユニットとして、自分がプロデュースするユニットとして扱おうと思いました。まあヒストリーでも俺がこのユニット作ってたからな、と自分を納得させておくことで経緯だとかそういったところは曖昧にしておきます。結果的に今に至るまでこのスタンスでやってきてとても楽しくやれています。メンバーの活躍があれば大喜びして応援しますし、GBNSとして活動してくれれば言うことなしです。GBNSのアイドルそれぞれの担当プロデューサーさんたちのツイートからも色々と考えさせてもらっていて、この判断は正解だったなと思っています。

担当ユニット、これからも頑張れ。

 

担当遍歴3人目 白雪千夜

白雪千夜は、マジで色々書くことあるのでこれはこれで近日中に記事書きます。割愛。

 

終わりに

最初から最後まで自分語りで、マジで読んでて一切面白味のない記事でした。読み返してみて、未来の俺以外誰がこの記事読んで面白いんだ…と思いましたが、書いたもんは書いたので放出しました。もしここまで読んでくれた物好きな方がいらっしゃいましたら、ここまでお読みくださり本当にありがとうございました。

では、近日中に白雪千夜についての記事でまた。

ススメ!シンデレラロードから紐解く岡崎泰葉

 お久しぶりです。「こんにちは。岡崎泰葉です。」のイベント告知を夢に見る回数が日に日に増えている岡崎泰葉Pです。目が覚めた時の絶望感は筆舌に尽くし難いです。

 ライブパーティーをしていて気付いたのですが、岡崎泰葉のススメ!シンデレラロードからもう1年経ちましたね。せっかくの機会なので、1年前の岡崎泰葉のススメ!シンデレラロードのお話を通じて私の担当の岡崎泰葉の話をしたいな、と思って筆を執りました。(遅筆すぎて筆を執ってから投稿まで時間が…LIVE Infinityのせいです。)

 

f:id:kn_imasp:20211113162640p:plain ※Plvその他が隠れているのはバグではなくて画像編集です

 

【注意】

・泰葉のコミュの色々なところから引っ張ってきているので、未読のものがある方にはうっかりネタバレなどあるかもしれません。

・テクストベースの解釈を心がけていますが、私の解釈に立脚するものであることはご了承ください。違うだろ!の意見もお待ちしております。

・便宜上、ススメ!シンデレラロードのことをスシローと省略します。某回転寿司屋のことを指してこの語を使うことは本記事においてはありません。

・長いです。

 

岡崎泰葉のスシローの立ち位置

 さて、お話を始める前にこのスシローが泰葉の物語全体の中でどのような立ち位置のものかについてお話する必要があります。前回のブログでも同じような表現を使ったのですが、このスシローは泰葉の物語の第3章の最初のシーンだと思っています。

 泰葉の物語は「現在」と向き合う第1章、「過去」を受け止める第2章、そして「未来」を抱く第3章という構成になっていると思っています。まずはこれらの第1章と第2章を振り返りつつ、スシローのどこが面白いのか、そして第3章はどうなっていくのかを考えていこうと思います。

 

 

第1章 「現在」を見つめて

 アイドル岡崎泰葉としての物語は16歳から始まりますが、彼女のことを語る上では過去を把握することは欠かせません。まずは泰葉の過去についてざっくりと触れ、そこからアイドル岡崎泰葉の物語がどう展開してきたのか、その第1章を見ていきます。

 第1章は泰葉が「現在」=アイドルとして活躍する今をどう捉えるか、という話です。子役・モデルとして活動していたところからアイドルに転身して活動を続け、ワンモアステップに至るまでを第1章と捉えています。

 

子役・モデル時代

 泰葉は5歳の頃から子役として活躍してきました。そして役者とモデルとして11年間芸能界で活躍を続けます。しかしある日、泰葉は自分がなぜ芸能界にしがみついているのかわからなくなります。仕事の楽しみも忘れて、大人の言うことを聞いて行動するただの人形になってしまっている現状に気がついたのです。そこで出会ったのがP(プロデューサー)です。真面目に、誠実に仕事をすることを信条としてきた泰葉は、楽しそうに仕事をするPの姿に興味を持ち、アイドルの世界でなら芸能界に入った時と同じような楽しさを感じながら仕事ができるのでは、と考えてアイドルに転身しました。

 泰葉が普通の女の子に戻るのではなくアイドルに転身することを選んだ理由は、今まで自分を支えてくれたファンの存在を蔑ろにはできないと考えたからです。こうして泰葉はアイドルとしての第一歩を踏み出しました。

 

出発点:初期R

 さて、こうしてアイドルの道を歩き始めた泰葉ですが、その初期のセリフは読んでいるこっちが小っ恥ずかしくなるような不器用さが見られます。「大丈夫、一人で出来ますから」「今更私がプロデューサーに教えて貰うことなんて…」など、隙を見せないように生きてきた彼女らしいセリフがあります。それにしたって不器用そう。そんなところも好きだぜ。「早くアイドルって認められたいの」「誰にも負けたくないから…」など、アイドルとして前へ前へ行こうとする焦りのようなものが見えます。しかしその一方で「いつでも基本が大事ですよね」と芸歴の長さから培ってきた感覚が垣間見えることもあります。

 そして何より注目すべきセリフはこれです。

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 アイドルとして仕事を重ねていくうちにワクワクや楽しさ、充実感などを思い出しながら仕事ができるようになった、というセリフです。アイドルを始めてから泰葉が求めていた仕事の楽しみを取り戻しつつある、ということですね。

 長い芸歴という武器を持ちながらもアイドルとしてはまだまだ駆け出しで初々しさがあり、しかしアイドルの仕事を通じて仕事の楽しみを取り戻しつつある。それが泰葉のアイドル初期でした。

 

通過点:小さな一歩

f:id:kn_imasp:20211204005009j:plain 大きなリボンが可愛らしい

 このカードは泰葉の2枚目のカードですが、後に触れることになるのでここでも軽く触れておこうと思います。

 このカードはアイドルの仕事を続けていったことでアイドルとしての自覚が芽生え始める、というカードです。LIVEバトルのセリフで「私は…アイドルです…!」というセリフがあります。そして親愛度演出では「これからも、もっと楽しくアイドルを続けたいです…!」。泰葉は元子役でも元モデルでもなくアイドルであって、これからもアイドルとして輝き続けることをPに誓ってくれています。プロデューサー冥利に尽きますね。

 あと特訓前のイラストでは眼鏡をしているのですが、これは泰葉のオフの時にしか見られない姿です。この眼鏡によるオンとオフの切り替えについては次項で軽く触れます。

 

番外:『アイドルマスターシンデレラガールズ ニュージェネレーションズ』の岡崎泰葉

 さて、話題が変わるのですが皆さんは『アイドルマスターシンデレラガールズ ニュージェネレーションズ』という漫画を読んだことがあるでしょうか。タイトルの通りニュージェネの3人の成長と活躍を描いたシンデレラガールズのコミカライズ作品なのですが、そこに登場する岡崎泰葉についても触れないといけません。

 この漫画で泰葉は3人の先輩のポジションで出演しています。「ウーロン茶飲まないほうがいいよ」のシーンは岡崎泰葉Pの間では擦られまくりですね(気になる方は「ウーロン茶 泰葉」と検索すれば無限に見られます)。自分もこのシーンは泰葉のプロ意識の高さと、そして何よりもライバルであって仲間である未央を気遣うという姿勢が見えて好きです。

 なぜこの作品を取り上げるのかというと、ここに描かれている泰葉には仲間がいて仕事を楽しんでいるアイドルとして描かれているからです。初期で紹介したセリフに見られるように、泰葉は誰かと一緒に仕事をしようとしていませんでした。子役時代に、同期はライバルだから隙を見せるな、と教えられてきたからでしょう。しかしこの作品の泰葉には塩見周子と安斎都という仲間がいて、彼女たちと仲間でありながらライバル、ライバルでありながら仲間という関係を築いていました。仕事を仲間と楽しみながら、その仲間と切磋琢磨する。アイドル岡崎泰葉の一つの到達点がこの漫画の中で描かれているのです。

 

 ちなみに私がこの漫画で一番好きなシーンはこちらです。

f:id:kn_imasp:20211117112039j:plain引用:namo.アイドルマスターシンデレラガールズ ニュージェネレーションズ2,スクウェア・エニックス,2015,p99,978-4757539037

 前項で軽く言及した、眼鏡によるオンとオフの切り替えの演出のシーンです。オーディションの直前=オフの時に仲間であるニュージェネの3人にアドバイスを送るシーンでは眼鏡をかけています。しかし周子と都に呼ばれてオーディションに挑む=オンになったこのシーンで眼鏡を外し、ライバルでもある3人に「負けないから」と強きの発言をしています。シンプルにプロ意識の高さがかっこいいし、仲間であってライバル、ライバルであって仲間という構図を眼鏡という一つのアイテムでも表現されているのが好きです。

 

終着点:ワンモアステップ

 さて、こうしてアイドルを続けてきた泰葉ですが、その活動の根源にあるのはファンの人たちを笑顔にしたい、ということだと気がつきます。バレンタインアイプロ=【ショコラフレーバー(•S)】ではファンとの交流を行い、今まで直接会う機会の少なかったファンの人たちと交流することで、ファンのかけがえなさに気がつきます。

 ぷちのセリフには、「アイドルとして、歌とダンスでお客さんに喜んでもらいたいな。輝くステージで、私の歌を届けるの!」というものもあります。ライブを通じてかけがえのないファンに思いを届ける。これが泰葉が見つけた「現在」の泰葉の夢です。この夢を叶えたのがこのカードでした。

 

 まずは特訓前から見ていきましょう。

f:id:kn_imasp:20211118130547j:plain メロンパン…


特訓前は眼鏡をかけてホン読みをしている場面です。ここでも眼鏡をかけることでオフを表現していますね。泰葉は子役の頃から何百何千回と台本を読んできました。そのため、目の前の仕事にしっかりと向き合う姿勢が身についています。しかしここで大事なのはこのセリフ。

「アイドルの自覚を、忘れずに…」

 ホン読みは子役の頃からやっていますが、今行っているホン読みはアイドルとしての演技のためだということをしっかりと自覚しています。子役の経験があっても、今アイドルとして求められている演技が子役時代のそれとは違うことを理解していて、さらにアイドルとしての自覚の強さもある、ということが読み取れるセリフです。子役としての経験とアイドルとしての自覚が読み取れるのが特訓前です。

 

 それでは特訓後を見ていきましょう。

f:id:kn_imasp:20211118130544j:plain いい、笑顔です。


まず目に入るのは表情です。笑顔ですね。笑顔は実は先に紹介した【小さな一歩】の頃からの泰葉のテーマの一つです。子役の頃の笑顔とは、大人に指示された演技のためのものでした。素の、等身大の岡崎泰葉としての笑顔はそこでは求められていなかったのです。しかしアイドルに求められるのは泰葉自身のパーソナリティー。笑顔は泰葉自身の笑顔が求められます。【小さな一歩】にはこんなセリフがあります。

「プロデューサーさんの前では…笑っても、いいですか?」

ファンの前ではなく、信頼できるPの前でだけ笑う、と解釈できます。まだアイドルとしての笑顔が確立できてはいない、ということです。しかし、続く【ショコラフレーバー( •S)】ではこのようなセリフがあります。

「昔よりも…自然に笑えるような」

ファンという自分を支えてくれている存在と直に触れ合ったことで、自然な笑顔=演技ではないアイドルとしての笑顔を取り戻していきます。そして、ワンモアステップの特訓後にはこんなセリフがあります。

「みなさんを笑顔にしたい。そのために、まずは私が笑顔になりますね♪」

 このセリフは前後半ともに注目すべきものです。まずは前半。「みなさんを笑顔にしたい」と言っています。泰葉がアイドルに転身した理由はファンの人たちを切り離すことができなかったからだと言っています。そしてアイドルとして成長してきた今、泰葉は本当にやりたいことを再発見しました。それはファンのみなさんを笑顔にすることです。そのために泰葉は笑っている、と後半では言っているのです。子役の頃は演技としての笑顔しか出来ず、アイドルになってからもなかなか自然な笑顔が出来ずにいました。しかしファンと直に触れ合うことで自然な笑顔を取り戻し、ついには笑顔をアイドルの武器として自在に使えるようになったのです。

 もう一つだけ取り上げたいセリフがあります。

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 泰葉はここで夢を叶えた、と言っています。本項で最初に取り上げた夢ですね。アイドルとして歌とダンスでお客さんを喜ばせる、ということでした。歌とダンス、そして最高の笑顔というVo,Da,Viというアイドルとして求められるものが詰まったステージを披露したことで泰葉の夢は叶いました。

 それでは次の夢とは何なのでしょうか。これを見ていくのが第2章の最初です。「現在」を見つめて今の自分がアイドルとしてやりたいことを見つけ、叶えた泰葉。彼女が次にどのような物語を見せてくれるのか、見ていきましょう。

 

 

第2章 「過去」を受け止めて

 第2章は泰葉が「過去」と向き合う話です。第1章ではアイドルとしてやりたいことやアイドルとしての成長が主として描かれてきました。しかし、泰葉はアイドルになる前から11年間も芸能活動をしてきています。これを泰葉がどう受け止めていくのか、見ていきましょう。

出発点:T.B.チアーズ

 まずはカードイラストを見てください。俺が好きだから見せます。

f:id:kn_imasp:20211118132631j:plain お前、そんな表情が…!

 泰葉が慈しむような表情で花束を抱えていますね。そしてその花束の中には青い封筒に入ったファンレターがあります。泰葉は青が自分の色だと思っています。見ると冷静になれて、大人になりたい自分に合っているからだ、とも言っていますね。それを理解しているファンとは一体誰かというと、子役時代からの泰葉のファンの方でした。俺より長いこと泰葉と関わりがあるなんて…。

 この手紙を貰ったことで泰葉は気づきます。「昔の私…間違いじゃなかった…」と。大人たちの言いなりになって仕事をしていましたが、それでもファンを笑顔にすることが出来ていたと気が付いたのです。これによって泰葉は昔から応援してくれているファンの存在も意識し始めました。「昔からのファンの方にも、これからのファンの方にも…伝えたいな…」というセリフがそれを象徴しています。

 そうして出てきた言葉が、この時の泰葉のあり方を端的に示しています。

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 これ!!!!!ここまでの流れからして欲しかったセリフそのものだったので、初めてこのセリフ見た時は思わず奇声を発してしまいました。そう、アイドル岡崎泰葉は転身してからの泰葉だけではないのです。第1章時点でも子役の経験を生かしていたりと、その兆しはありましたがファンからの手紙でそれに気付かされるのは、ファンを誰よりも大切に思っている泰葉だからでしょう。泰葉が過去の自分を受け入れた瞬間でした。完璧です。モバマス最高ォ〜!!

 

 特訓後のセリフでは色について触れています。先程触れた通り、泰葉は自分に似合う色は青だと言っています。冷静になるための色としての青でしたが、ここでは新たな考えを示しています。

f:id:kn_imasp:20211118140445p:plain

 感情、という言葉が出されています。笑顔は表情でしたが、その大元になる感情を思いっきり表現してもいいんだと、考えるようになりました。この色についての考え方は後々さらに変化していくので覚えておいてくださいね。

 

番外:ガーリーポッシブ

 泰葉を語る上で欠かせない要素は、GIRLS BE NEXT STEPというユニットの存在です。関裕美、白菊ほたる、松尾千鶴、岡崎泰葉の4人から構成されるユニットです。

f:id:kn_imasp:20211119112740j:plain ここ好き

 このユニットについて語り出すと、それはそれでまた一つ別のブログ記事が出来上がってしまうので詳細は割愛させていただきます。今回は、泰葉にとってこのユニットがどのような意味を持っているかについてをお話しします。

 泰葉はこのユニットを組むまでにもユニットとして活動することは何度もありました。しかしそのユニットはいずれもPから与えられたもので、自発的に活動していたわけではありません。ところが今回のユニットは、GIRLS BE(ほたる、裕美、千鶴の3人から成るユニット)のライブを見た泰葉が自分から加わりたいと言ったのです。大切なかけがえのない友人であると同時に、アイドルとして負けたくないライバルでもある3人と一緒にユニット活動をすることで、自分が忘れていた仕事を楽しむこと、そして年の近い友達との交流など、子役時代には経験できなかったことができると考えたのです。

 ただの人形としてではなく、自分の意思を持つアイドル岡崎泰葉として行動した結果できたのがこのGIRLS BE NEXT STEPというユニットです。泰葉にとっては可能性の塊のユニットです。だから泰葉にとってこのユニットが特別で重要な意味を持っている、ということです。そのうちGBNSについての記事も書きたいなあ…ハッ!

 

通過点:蒸機公演 クロックワークメモリー

 過去のファンから手紙を受け取ったことで過去の自分含めてアイドル岡崎泰葉だと自覚した泰葉ですが、それを表現する場が与えられました。それがこの『蒸機公演 クロックワークメモリー』です。以下ストーリーのネタバレ注意。

 汚染された地上から逃れた人類が築いた地下都市から抜け出して、地上で花を咲かせることを夢見るヨーコ。そんな彼女が拾った旧式オートマトン、ヤスハは、ヨーコと過ごすうちに自我を持ち始め、ついにはヨーコの夢を継いで木々が芽吹き花が咲き乱れる地上を再現した。というのが大まかなあらすじです。詳しくはモバマスを開いてイベントメモリーへ!!

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 この物語はおそらくテリー・ギリアム監督の映画『Brazil』(邦題:『未来世紀ブラジル』)を下敷きにしていると思われます。もし関係なくても解釈するうえで助けになることは間違い無いので、蒸機公演が好きな方はAmazon Primeとかで観れるのでおすすめです。なぜ突然これを紹介したのかというと、私はこの映画を見たことで新たな着眼点を得ることができたからです。

 いずれの物語もキーワードは「夢」です。これは寝ている時に見る夢や白昼夢など、空想としての夢と同時に、何か叶えたいものなどを指す方の夢を意味しています。蒸機公演における「夢」とは、ヨーコからヤスハに受け継がれた地上で花を咲かせるという夢と同時に、ヤスハが地上で再生し続けている、都市でのヨーコたちとの思い出=ログの再生という、人間でいうところの回想にあたる夢です。この二重の夢が物語に厚みを持たせると同時にヤスハと岡崎泰葉との類似性を示しています。

 ヤスハはログを見直す(=夢を見る)ことによって夢が何かを思い出し、孤独で厳しい地上の世界でも種を蒔き続けることができました。岡崎泰葉も同じです。過去を見つめ直し、自分は何がしたかったのか(=夢)を思い出し、それによってアイドルとして花を咲かせることができたのです。何十年でも、何百年でも、年千年でも夢を叶えるために歩みを止めないヤスハの姿に、11年という長きにわたって芸能界で生きている岡崎泰葉の姿が重なって見えます。

 蒸機公演の素晴らしいところは、これが芝居を通じて展開されたことです。泰葉は元子役。演技力の高さはアイドルの中では群を抜いているでしょう。もちろんそれは過去の経験からきたものです。夢(=ログ)を見ることで歩き出すヤスハを、過去に磨いてきた武器でもって泰葉が演じる。二重の意味で過去を受容しているのがこの蒸機公演なのです。この文脈以外でも色々と語りどころはありますが、とりあえず第2章の筋に関係ある部分を抜粋しました。ぜひ皆さんも読んでみてください。

 

終着点:あの日の私を受け止めて

 過去を見つめ直した泰葉でしたが、そもそも第1章の時点で彼女には明確な目標が生まれていました。それは、ファンの人を笑顔にすること。そして子役時代の自分のファンから手紙を手紙を貰ったことで、ファンとは、過去のファン+現在のファン、というように捉え方が変わりました。そんな泰葉が次にやること。それは全てのファンの人を笑顔にすることです。アイドルになる前から支えてきてくれた人たちや、アイドルになってから泰葉を好きになってくれた人など。大事な、大事なファンの人たちにありがとうの気持ちを伝えたい。それが実現したのがこのカードのライブでした。

 

 まずはカード名の【あの日の私を受け止めて】をから解釈していこうと思います。「あの日の私」とは誰でしょうか。これは2通りの解釈ができると思います。

 まず一つ目は過去の自分です。これはもう見てきた通りだと思います。子役として人形みたいにやってきて、でもそれでもファンの人を笑顔にできていた、完全に間違いではなかったのだと、そう過去の自分を承認したということですね。

 もう一つ、私が考えているのは、アイドルにならなかった世界の自分です。泰葉は時折、「普通の女の子」としての自分を話題にすることがあります。例えばシンデレラヒストリーなどでは、ライバルが引退して普通の女の子に戻ると宣言するところや、ショッピングモールで友達と買い物を楽しむ自分と同年代の女の子たちを見て、自分にもそのような道があったと考えています。実際、アイドルになる直前、芸能界を引退して普通の女の子に戻るという道も選択肢としてあったようです。それでもアイドルになったのはファンの存在を忘れたくないからで、その話はもうしましたね。今回のカードではそのような話が再度出されています。

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この羨ましいという感情の向き先は、当時の泰葉が手に入れることのできなかった「普通の女の子」としての幸せを享受していた同年代の女の子たちです。なぜ、このカードで突然普通の女の子の話をしだしたのでしょうか。

 それは、このカードの特訓前の舞台が泰葉の故郷である長崎だからです。特にここは稲佐山の展望台で、新世界三大夜景の一つに数えられるほど有名なスポットです。f:id:kn_imasp:20211202163747j:plain 夜景よりもお前がキレイだぜ

夜景が綺麗だということは、デートスポットであるということです。ステレオタイプ的な発想でいけば、女の子の幸せは綺麗な夜景を恋人と見ることではないでしょうか(この発想を絶対化する意図は毛頭ありません)。

 泰葉は芸能界入りしてから東京に引っ越しています。そのため、故郷の長崎で年頃を過ごすということは、芸能界に入らなかった世界線でしか起こり得ません。しかし、今回このカードでP(信頼できる男性)に連れられて展望台に訪れて、その「普通」の幸せとはどのようなものなのかを味わうことができました。

 しかし、泰葉はその幸せを味わった上で、「今はもう、(普通の女の子のことを羨ましいとは)思いませんけど」と述べています。その根拠となっているのが「舞台の光もやっぱり好きで」という言葉です。舞台の光もいくつかの意味が考えられて、舞台からの光と捉えれば泰葉がずっと大切にしてきたファンの人たちの存在をやはり大切に思っていると、舞台で放つ光と捉えればアイドルとして輝く自分を肯定している、と考えることができます。個人的にはこの両方が泰葉の言う光だと思っていて、だからこそ泰葉は普通の女の子としての生き方ではなく、アイドルとして生きていくことを選んでいるのだと思っています。このことを再確認できたのがこのカードで、それによってアイドルにならなかった世界線の自分という生き方と向き合えたのではないか、と思っています。

 

 特訓後の方に話を移したいと思います。まずはイラストを…。

f:id:kn_imasp:20211204002239j:plain 泰葉…キレイだぜ…

 まずは表情について。泰葉の表情については【ワンモアステップ】の項でも少し触れました。子役時代の泰葉にとって表情とは演じるもので、アイドルになってからも自分らしい、ありのままの笑顔ができませんでした。そこから自分の笑顔を取り戻し、アイドルの武器の一つとして使えるようにまで成長したのが【ワンモアステップ】でした。

 そこからこのカードでは、泰葉は表情についてこのように言っています。

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 自分で自分の感情をコントロールできていない様子が読み取れます。しかも泣いています。泣くということを、気持ちがぽろぽろとこぼれ落ちる、と表現しています。感情は、コントロールしたり、武器として使ったりするためのものではなく、泰葉の本心から溢れ出るものとなったのです。心を取り戻したヤスハの姿も重なって見えますね。

 この感情は、泰葉のファンへに対する思いの大きさに起因しています。このイラストの舞台はライブ会場です。そのライブのMCの場面が描かれています。【T.B.チアーズ】から泰葉が望んできた、ファンの人に直接今までの感謝を伝える場としてこれ以上無いでしょう。自分の現在と過去を見つめ直した時、泰葉にとってのファンの存在の大きさがくっきりと浮き出てきました。そんなファンと改めて向き合う場で、泰葉は心からの感謝を伝えることができたからこそ、涙が溢れて止まらなかったのでしょう。文脈最強カード。

 

 これはおまけ情報ですが、このカードの衣装は初期Rのリメイク的なものになっています。初期Rの特訓後がこちら。

f:id:kn_imasp:20211204162229j:plain まだまだ笑顔が…

 俺の担当はどうしてこう、揃いも揃って初期Rのリメイクを…。いや、めっちゃ好きですが。この衣装のポイントは、あしらわれている花と衣装の色です。

 まずは花について。この花は庭石菖という花です。実は【ワンモアステップ】の衣装にも同じ庭石菖の花があしらわれていて、節目節目で泰葉を象徴するようなアイテムとして描かれています。庭石菖の花言葉は、「繁栄」「豊かな感情」「煌めき」とどれも泰葉とは切っても切れない要素となっています。これが初期の頃から描かれていて泰葉の行く先を示唆していたのは中々ニクい演出だと思います。

 衣装の色は青を基調としていますが、これは泰葉のイメージカラーです。【T.B.チアーズ】の項でも見た通り、泰葉は青を冷静さをもたらす色として自分に相応しい色だと言っていました。それと同時に青でも感情に任せることが大事なこともある、と言っており、今回は強い感情が全面に出ています。この色、よく覚えておいてくださいね。

 

 特訓前後の様々な要素から泰葉のファンへの思いの強さが表れており、それと同時に過去の自分を今の自分の糧として受け止めることができた、というのがこのカードです。ここで過去と向き合うのは一区切りで、次からはやっっっとスシローの方に話を進めていきます。(ここまで一万字書くのに1ヶ月)

 

 

第3章 「未来」を抱く

 ここからようやくスシローの話に入っていきます。第1章や第2章よりもボリューム控えめですので、あともう少しだけお付き合いください。

 今回のスシローは、泰葉がファンミーティングイベントの仕事を悩みながらもこなしていく、という内容です。悩みの内容は、ファンミーティングでの質問にどう答えるか、というものでした。その質問は、「これからどんなアイドルになりたいですか?」というものです。「過去」と「現在」とを見つめ直したタイミングで、「未来」へのビジョンを考える契機となったイベントでした。この問題に対して泰葉がどのようにして答えを出していったのかを細かく見ていき、担当Pとしてどんなアイドルになってほしいのか、泰葉の「未来」も考えてみようと思います。

随所に見える第1章と第2章

 泰葉が答えを考えていく過程には、今まで泰葉が辿ってきた道がはっきりと見て取れます。いくつかピックアップして話していこうと思います。

 

 まずは冒頭の劇のシーンから。

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共演した子役の子に、仕事が楽しいかを尋ねています。幼い頃の自分がこの子役の子に重なって見えての発言だと思います。共演者は弱みを見せないようにしなければならない競争相手、としか考えていなければ、周囲を気遣うことはありません。成長が感じられますね。

 さらに、このシーンの後に監督と話すシーンがあります。その監督は泰葉の子役時代にも仕事で関わったことがあるそうで、泰葉が長い間芸能界で生きてきたことを匂わせていました。

 

 この演劇は、泰葉の人生を示唆しているような内容になっていました。

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泰葉が演じるキャラクターは、高校を卒業してから音大に進むことになっていました。しかし、蓮実演じる後輩が、本当は進路に迷っているのではないか、と指摘されて反論している場面です。

 泰葉も自分が演じるキャラクターと同じように、進路に迷っています。そしてその姿は今に限らず、アイドルに転身する直前の泰葉の姿とも重なってきます。泰葉がここのシーンでセリフを詰まらせてしまったのは、そのような理由からでしょう。自分がなりたいものもわかっていないのに、それを語るキャラクターを演じるという難しさがあったのだと思います。

 この劇については後ほど、もう一度だけ触れていくので、泰葉と泰葉の演じるキャラクターに重なる部分がある、ということを覚えておいてください。

 

 次に泰葉の学ぶ姿勢についてです。初期Rの項でも触れた通り、アイドルなりたての泰葉はPから学ぶことなんて何もない、と言ってきます。こわい。ところが今回のコミュでは、泰葉は同僚アイドルの働きぶりを外から見ることによって様々なことを学ぼうとしています。

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例えばこのシーン。蓮実に連れられてスイーツのイベントに行くのですが、そこで接客をこなす同僚アイドルたちの姿に感銘を受けてこのように言っています。他にもバラエティー番組に出演して、そこでもバラエティーをでの振る舞い方などを共演者から学ぼうとする姿勢が見られました。学びの姿勢一つ取ってみても泰葉の成長が垣間見えます。

 

 続いては、悩みを瞳子さんに打ち明けてからのシーンです。

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これ、まさに漫画『ニュージェネレーションズ』岡崎泰葉の進化系なんですよね。アイドルとしての在り方を考えた時に、「ひとりでするものじゃない」という言葉が出てくるのは、泰葉がそれほど仲間/ライバル、仕事で関わるスタッフ、そして何よりもファンの人たちを大切に思っているからこそだと思います。先程の学びの姿勢とも共通するのですが、アイドルとして他者と関わりを深く持つようになったことで泰葉の人生観が大きく変わっていったことが読み取れます。

 

 この瞳子さんとの話が終わってからのシーンについても触れなければなりません。

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ここで泰葉は自分がやってみたいことを提案してきています。ここに泰葉の仕事への向き合い方の変化が見て取れます。

 子役時代は大人の望む自分を演じてきて、仕事に自主性はありませんでした。アイドルに転身してからも、与えられた仕事については非常に意欲的に取り組んではきましたが、このように自分から何かを提案してくれる場面はあまり無かったように記憶しています。しかし、今回泰葉は自分が仕事でやりたいことを持ち出してきました。この主体性こそが人形ではない泰葉の行き着く所だと考えており、このような提案をされた俺Pさんはニッコニコでした。ゲーム中のPさんも泰葉の提案を快諾していて思わずにっこり。

 ここまで強い思いがあるのは、この仕事がファンミーティングであることも影響していると思います。見てきたように、泰葉にとってファンの存在はかけがえのないもので、泰葉がアイドルとして活動している理由にも大きく関わってきています。そんなファンの皆さんと直接会ってお話できる数少ない機会だからこそ、泰葉も普段にも増して気合が入ったのでしょう。

 

 最後に衣装について軽く喋らせてください。

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 何回見ても良いイラストだなあ…。ではなくて、この衣装の色に注目してください。青じゃないんです。確かに【キラメキタイム】の衣装も青ではなかったのですが、今回はコミュの中で衣装の色についての言及があったのでわざわざ取り上げています。

f:id:kn_imasp:20211206195003j:plain 補足:【キラメキタイム】めっちゃ好き

 GBNSのメンバーとファンミーティングについて話をしているとき、泰葉は青色の衣装も綺麗だけど、と言っていました。衣装を自分の意思で決めるとき、当然その中には青いものが選択肢としてあがっていたわけです。しかし、泰葉は青ではない色を選びました。ここに、泰葉の色に対する考え方が表れています。直近のドリフでスチームカラーズとして登場した際に、泰葉はこんなセリフを残しています。

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「たくさんの色」というのがキモです。泰葉は役者として様々な人間を演じてきただけでなく、アイドルとしてたくさんの仕事をこなしてきました。それによって泰葉の内側には青だけでは表現しきれない、たくさんの色がついていて、それを表現する、と泰葉は言っているのだと思います。このような解釈に沿ってスシローの泰葉の衣装を見ると、これはファンの人たちに今まで見せてこなかったような泰葉の一面を見せるという、非常にチャレンジングな決断だったのだと思います。

 

 このコミュでは様々な場面から泰葉が過去からどれほど成長してきたかを見ることができました。その上で泰葉が出した答えがこれです

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まだなりたいアイドル像はわからないけど、それでも過去から現在までを通じてわかったこと、「みんなを笑顔にしたい」ということ。その気持ちを大切にしてこれからもアイドルとして活動していく、という所信表明でした。これからなりたい自分は一緒に見つけていこうね、というとても泰葉らしい言葉で将来についてを語っていました。

 では泰葉は結果的にどのような将来像を持つのでしょうか。考える材料になりそうな要素をもう一つ挙げ、その後に個人的願望も盛り込んで考えていこうと思います。

 

憧れが憧れを生みだす=次世代に未来を見せる

 今回のコミュの中で強調されていたのは、泰葉に憧れる人々の存在です。アイドルがアイドルを生み出し、そしてそのアイドルが次の世代のアイドルの卵の憧れとなる。そのような構図が今回のコミュの中だけでも3回もありました。

 まず1人目は劇に登場した、蓮実が演じる後輩キャラクターです。

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この人物は、泰葉のフルートの音色に憧れて学校を決めたと話しています。先にも述べた通り、泰葉の演じる人物と泰葉本人には近しい要素がたくさんあり、このキャラクターが泰葉の人生の暗喩となっています。そのことがこの直後のシーンで強調されます。

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 これは、先に紹介した子役の子(泰葉に仕事が楽しいかどうか尋ねられた子)が、泰葉に憧れて子役を始めた、ということが判明するシーンです。この子役の子の憧れの向き先は子役岡崎泰葉であることは留意しておかなければなりません。

 泰葉に憧れる人物の3人目はファンミーティングに来てくれたファンの子でした。

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このブログで何度か使用したこのカードのモブロリちゃんですね。「泰葉ちゃんみたいになりたい」とは憧れの究極系であって、この子がファンミーティングの中でも強調して描かれていました。そして彼女が憧れているのはアイドル岡崎泰葉であって、この点が子役の子との違いであることも重要です。

 他にも泰葉に憧れる人物というのは示唆されており、例えば営業コミュの「Girls be little step!」ではGBNSに憧れる女の子が登場していました。

 このようなことからも泰葉の将来像が一つ見えてくると思います。今までのまとめと併せて考えていこうと思います。

なりたい自分は?

 ファンを笑顔にすること、そして憧れの対象になること。これが泰葉のやってきたことです。私はアイドルが対外的に何かを残すとすればこの二つが重要であると考えています。例えば、長富蓮実などは憧れが強く描かれています。彼女が憧れるのは昭和レトロなアイドルたち。今でも「伝説の」と枕詞のつく彼女たちも、ファンを笑顔にして、そして多くの少女たちの憧れの対象になってきました。

 泰葉もトップを目指していく余地があるのではないか、というのが私の考えです。泰葉には様々な色=武器があります。そして子役時代から培ってきた高いプロ意識に、芸能界にかける執念の強さもある。さらに自己実現としてアイドルを誰よりも楽しむことができる。原動力もそこに向かう手段も、泰葉はもう手に入れているのです。泰葉を象徴する花である庭石菖の花言葉の「繁栄」が向かう先としても、トップアイドルはふさわしいのではないでしょうか。

 泰葉は初期Rで「誰にも負けたくないから…」と言っていました。これこそがアイドルになったときの偽りのない彼女の思いであり、彼女を突き動かしてきた原動力でした。今は原動力は変わりましたが、この思いが残っているのならば泰葉はトップアイドルになれると、担当Pとして思っています。

 

 ただし、これはPからの願望であって、このピュグマリオン的欲望を泰葉に具体的に向けることはありえません。泰葉は人形のように言いなりになって動いているのではなく、自分の意思を持って活動していきます。私の願望抜きに泰葉には行動していってほしいですね。もし泰葉が道を踏み外そうとしたら、一度立ち止まるように諭して、それでもそうしたいのならそれを尊重する。それくらいのスタンスです。

 泰葉がどのような未来を抱くことになるのか、これからの活躍に期待して結びとします。

 ここまでお付き合いくださりありがとうございました。岡崎泰葉を何卒よろしくお願いします。泰葉の2周目SSRはよ。

レッド・ソール所感

 初投稿です。

 レッド・ソール。みなさんお聴きいただけたでしょうか。イベントコミュはお読みになったでしょうか。素晴らしかったですよね?ね????

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 私はイベランをしたので、初日に全部回収しました。ちなみに最終順位としては50傑入り、スコアも3桁で余裕の金トロでした。やりきった感がすごい。あとアタポンはもうええ。

 美優さんにとって18ヶ月ぶりのイベントということで、発表の段階から期待に胸を膨らませまくってイベントに臨んだのですが、率直に言って大満足でした。今回は、レッド・ソールのイベントのどこがどう良かったのかについてお話ししたいと思います。

 

注意

・イベント「レッド・ソール」のネタバレを含みます。未読の方は先にイベントコミュを読んでからご覧いただけると幸いです。

・三船美優というキャラクターに対する個人的な解釈がふんだんに含まれています。そうじゃねえだろ!という意見もお待ちしております。深め合いましょう。

・文が長いです。駄文をつらつらと申し訳ありません。

 

三船美優の物語の第一章が完結した

 今回のイベントをもって三船美優の物語第一章は完結したと言っても過言ではないと思います。今までの道筋を見れば、ここが一つの終着点だと感じました。

 まずは美優さんの物語とはどのようなものだったのか、アイドルコミュやカードコミュなどのコミュからの視点と、Last Kissからの視点とで考察していこうと思います。その上で今回のイベントがどのようなものだったのか、美優さんPの視点からみていきます。

 

1人で立てるようになるまでの物語

 まずはコミュから美優さんの物語を紐解いていきます。

 物語は美優さんがアイドルにスカウトされるところから始まります。仕事も人付き合いも上手くいかず、その状況を変えようと背伸びして買ったハイヒール。それが折れて立ち上がれなくなってしまったところをスカウトされ、美優さんはPに支えられながらステージに立つ決断をしました。

 美優さんはPに支えられながらステージに立ってきました。Pに寄りかかって、Pが持ってきた仕事をする。今までに美優さんはコスプレ紛いの衣装を着る機会が多かったのですが、それでも拒絶することなくやり続けたのは、それがPの持ってきた仕事だからでした。もちろんこれはPへの信頼の表れなのですが、それと同時にPへの依存といっても差し支えない状態です。

 しかし、この状況が明確に変わったコミュがありました。それは『印象』のコミュです。美大生に自分を絵画に描いてもらう、という内容のコミュです。しかし出来上がった絵画は美優さんの自己評価とは大きく異なるものでした。自分には誇れるような色などない。そう思い込んでいた美優さんの考えとは裏腹に、美大生の描いた水彩画の中の美優さんは豊かな色彩に溢れていました。今までに経験してきたコスプレ紛いの仕事も、美優さんの中の色を増やすことに一役買っていた、ということです。

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 ただただ盲目的にPの持ってきた仕事をこなすのではなく、その仕事を経験することで自分の中にどのような魅力が付くのか。そのことについて自覚的になったという点でこの『印象』のコミュは一つのターニングポイントとも言うべきコミュでした。

 この後に追加されたデレステSSR[教室の白百合+]のルーム内セリフでは、26歳にもなって制服を着るというわけのわからない仕事によって、自分の中の色を増やすことができたと自ら話しています。

 

 Pに盲目的に従うのではなく、自分でもどのように仕事をして、それによって何を得られるのかを考え、そうしてアイドルとしても成長するようになる。そこまで成長した美優さんが次に見せる姿はどんなものなのか、と期待していたところにレッド・ソールのイベントが来ました。続きはLast Kissのお話の後に。

 

ただの失恋ソングではなく…。



 CINDRELLA M@STER 050といえば…そう、みなさんご存知Last Kissですね。f:id:kn_imasp:20220106114944j:plain

 このLast Kiss、歌詞の字面だけを追えば普通の失恋ソングの文面なのですが、それと同時に美優さんの決意が込められた歌でもあります。その決意とは何なのかを説明します。

 Last Kissは「私」と「あなた」が別離する話です。では、この「あなた」とは誰でしょうか?歌詞の中で「あなた」は「私」に手を差し伸べています。差し伸べられた手を取るという行為は、美優さんにとっては一般とは異なる意味があります。それは、アイドルとして踏み出すことを決めるという意味です。ヒールの折れた聖夜にPの手を握り返してアイドルとして立つことを決めた、ということについては先述の通りです。つまり、手を差し伸べた「あなた」をPとして解釈することも可能だということです。

 この解釈に沿って歌詞を読んでみましょう。Pに好意を寄せている節のある美優さんの失恋ソング、と読めないことはないですが、それよりもコミュなどから読み取れる情報に符合する解釈があります。

 それは、Pに甘えたい気持ちを断ち切って1人で立とうという決意の表明としての解釈です。恋愛感情に似たような、依存したい、甘えたいという感情を抑え込み、1人で進めるようになろうという美優さんの強い決意表明の歌を、彼女の雰囲気にマッチする失恋ソングの文脈の裏に乗せている。それがLast Kissだと私は考えています。

 

 ここで歌詞ではなく、ライブの話をしようと思います。Last Kissがライブで完成されていくと同時に美優さんの物語の針も進んでいることが実感できる、という話です。

 Last Kissがライブで初披露されたのはSS3Aで、そこから6th、7thと今までに3度も披露されてきました。こんなことを言ってしまうと怒られるのかもしれませんが、最初にSS3AのLast Kissを見た時は、原田さんが1人でステージに立っている感動と同時に、最後までちゃんと歌いきって踊りきれるのかというハラハラもありました。

 しかしパフォーマンスは回数を重ねるごとに向上し、直近の7th名古屋公演のLast Kissは非の打ちどころの無い、最高のパフォーマンスでした。このLast Kissを見る私の中には不安など一切無く、このような瞬間にも美優さんが1人で立とうとしてきているのかな、と感じます。

 

 美優さんが1人でステージに立とうとして、現実のライブでもそれを実現しつつある。そのような形でLast Kissは一種の完成を迎えようとしています。そのような状況で、美優さんは次にどのような曲を歌うのだろうか、と毎日妄想に耽っていました。そこで告知されたのが今回のイベント。次項からそのお話をしていきます。

 

自分を誇り、自分の靴で歩いていく物語

ユニットのコンセプトについて

 さて、今回のイベント曲である『レッド・ソール』を歌唱したユニットである『flamme martini』ですが、このユニットのプロデュースを企画段階から行ったのはPではなく、自身もメンバーとして参加している桐生つかさでした。ユニットのメンバーを招集するにあたって桐生つかさが重視したものは、芯の強さです。

 では、彼女は美優さんのどこに芯の強さを見出したのでしょうか。物腰柔らかで流されやすいようなイメージが先行しがちな美優さんの中に芯の強さを見出すのは、一見すると難しいように思われます。

 桐生つかさはAfter20で美優さんと共演した際に、美優さんの中にある強さを見出しています。社長業での問題を美優さんに解決してもらった桐生つかさは、美優さんを秘書としてスカウトしようとします。しかし、その後のステージでつかさはアイドルとしての美優さんに圧倒されます。

 アイドルと社長という二足の草鞋を履くつかさにとって美優さんは、OLの道を辞めてアイドルをしているという過去を否定的に解釈されうる人物でしょう。しかし実際の美優さんは、OL時代のスキルとアイドルとしての魅力をどちらも高いレベルで兼ね備えたアイドルでした。

 美優さん自身がアイドルになる以前の自分を肯定することはあまりありませんでした。しかし、桐生つかさとの共演を経て、歩んできた過去があるからこそ自分の中に様々な色がついていることを確認したのです(あくまでもその話はAfter20の世界線なので、やっていることは『印象』と同じですが必要な話だったと思います)。そこに、美優さんの中の揺るぎない強さが見て取れます。

 そのような魅力を知っているつかさだからこそ、今回『flamme martini』を結成するにあたって美優さんに声をかけたのでしょう。しなやかで芯のある、流されない強さ。美優さんにとってのそれは、アイドルになる以前からの26年で培ってきた様々な経験とそれに基づくスキル、そしてアイドルになってから研鑽を積むことで手に入れた様々な魅力とそれを自覚することによって身についた自己肯定感でした。 

 

 ちなみに、今回のユニットの名前にも使われているマティーニというカクテル。カクテルの王様という異名をもち、カクテル言葉は「棘のある美しさ」です。毅然とした、堂々たる美しさを形容するにはこれ以上無いカクテルだと思います。ぜひ美優さんとマティーニで一杯やりたいですね。

 

 今回のイベントでは、美優さんの中にある強さについてスポットライトがあたっていました。ここからは具体的にどのシーンでそれが出ていたのかを見ていきます。

 

第3話『full up』について

 一番まとまっていてわかりやすく読みやすいのは、イベントコミュ第3話『full up』です。話としては、つかさに任せられたユニットの広報周りの仕事を美優さんがどうこなすか、という内容です。様々なアイデアが湧いてきて、その中からどれを選択するべきなのか迷い、それでも最後には自分でどれを選ぶのかの決断を下す、というオチになります。

 まず仕事を引き受けるシーン(これは第3話ではないですが)にて、美優さんは自ら名乗りを上げて広報関連の仕事を引き受けます。それも、OL時代のノウハウが活かせるかもしれない、という理由からでした。ここに美優さんは過去を受け止め、それも自分の力になっていることに自覚的だということが表れています。過去の自分を全否定していた昔の美優さんではとても考えられなかったことで、私はこの時点で感涙しました(比喩や誇張ではなく物理的に涙が出ました)。そして最後にどの案を決めるかの決断を自分で下す、ということも自分に最低限の自信がなければ不可能です。それを当たり前のこととしてこなす美優さん、成長しましたね…。

 

 ところで、このコミュタイトルの『full up』とは何を指しているのでしょうか。OP~EDのコミュタイトルをつなぎ合わせることで、『flamme martini』という一杯のカクテルが出来上がる、というのは有名(?)な話ですが、あえて「full up」という言葉を選び、そこに美優さんを主役としたコミュを配置したのにはそれなりの意味があるはずです。「full up」という言葉は、何かを満たすというようなニュアンスですが、一体何が満たされたのでしょうか?

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 私は、美優さんの充足感についての「full up」だと思っています。その根拠として、星輝子との会話があります。まずアイドル仲間と気軽に会話ができる、ということ自体が初期の美優さんからしたら考えられないことでした。口下手で人付き合いが苦手な美優さんにとっての理解者はPくらいでした。しかし、美優さんはアイドル活動を通じて様々なアイドル仲間ができてきて、交友関係が広がっていきました。今まで絡みが無かった星輝子と普通に会話できているのも、その積み重ねのおかげでしょう。そう言った意味での充足感が一つ。

 さらに会話の中身として、美優さんは「やりたいことが多くて……。」と発言しています。アイドル以前の美優さんは「やるべき」ことに押しつぶされ、アイドルになってからの美優さんはお仕着せの仕事をこなすことが多かったです。その美優さんが主体性を持って「やりたい」と思えることがたくさんある。それが充足感でなければ、どこに充足感という言葉が当てはまるのでしょうか。「full up」とは美優さんの心を埋める、という意味でも捉えられると考えています。

 

SR(+) [レッド・ソール] 三船美優(+)について

 続いては報酬カードのセリフなどについて見ていこうと思います。こちらは割と細かい要素を回収することになるので、雑然とした感じになってしまうことはご了承ください。

 

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 まずは特訓前の親愛度演出とカードコミュからです。ここでは美優さんとPとの関係についての発言があります。普段からPに寄りかかりがちなことを美優さんは今回のユニット活動を通じて感じました。しかし、美優さんはその関係を変えたかったと言っています。ただ自分が寄り掛かるだけでなく、Pが認めてくれることを原動力として自らの意思で歩み続けることを決心しています。完全にLast Kissですわぁ…。ご褒美をせがむ、というのもどこか「それでもまだ好き」な感じが出ていて良いですね。

 ただ、私は美優さんには頼られたい!!と思っているので、美優さんが完全に離れていってしまったら泣いてしまいます。今回のコミュだけでも何度袖を濡らしたことか……。

 

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 次に、特訓後の親愛度演出についてです。ここでは、今までの仕事は全て与えられたものだった、と今までのアイドル活動を振り返っています。その上で、今までの仕事は例えそれが与えられたものだとしても覆されることのない足跡であって、それこそが自分がアイドルとして頑張った証。それが自分を誇るということだと考えるようになっています。

 自分を否定していた美優さんが、それを受け入れ、肯定するようになり、そしてついにそれを誇れるようになった。今までの積み重ねの全てが美優さんの成長の糧になっている、ということです。これからも美優さんは成長し続ける、そう予感させるセリフでした。

 

 続いて、特訓後のイラストについて少し話します。本当はホームやルームのセリフについても何か言おうと思ったのですが、内容が重複する箇所が多いので割愛します。

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 まず目が行くのは深紅のドレスを纏った美優さんと肇ちゃんでしょう。この組み合わせといえば、『Noctutne~For SS3A Rearrange Mix~』ですね。誇張抜きで2,000回くらい聴いてます、良すぎるので。歌詞も歌い方も非常に情熱的で、そのような歌で共演した2人が赤い薔薇をモチーフにした衣装で同じ画角に収まるのには、感じ入るものがあります。あと単純に顔が良すぎる。本当に。

 衣装について掘り下げますが、注目すべきは曲名にもなっている赤いハイヒールです。ハイヒールは、美優さんの人生そのものです。人生に挫折した夜、折れたヒールからガラスの靴を履くアイドルに転身したことが象徴的です。この赤いヒールを目立たせるために、美優さんのドレスには右脚部分に深いスリットが入っています。靴という、全身から見れば比較的目立たない部分でありながら、スリットを入れたドレスに真っ赤なヒールを鳴らすことで、自分の存在をアピールする。そのことに特化した衣装だと言えるでしょう。

 さらに衣装について気になるのは、この赤という色です。美優さんはモバの初期カードから赤い衣装に何かと縁があります。デレステでも最初に実装されたSSRは深紅のドレスで、[ルージュクチュール]という名前を冠しています。さらに、モバの初期カードをリメイクしたような3枚目SSRの[聖夜の約束]。節目節目で美優さんは赤いドレスに身を纏っています。赤について、美優さんはこのようにコメントしています。

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「赤は…嫌いではありません。私にひそむ情熱を、引き出してくれるようで」

 これは[聖夜の約束]のホームのセリフからの引用なのですが、その衣装にあしらわれている赤いポインセチア花言葉は「私の心は燃えている」であり、美優さんの中にある情熱が表現されているようです。他にも[ルージュクチュール]のライブ開始時のセリフなど、そのことについての言及は数多くあります。以上のことから今回のレッド・ソールの衣装もやはり、美優さんの情熱を表現した色合いであると考えられます。

 他に気になるのは、背景に大きく映り込んだ電車です。電車とは、敷かれたレールの上を移動するものです。美優さんも会社勤めしていた頃はよく乗っていたでしょう。しかしこのイラストでは美優さんは電車に乗っていません。この対比の構造によって、美優さんが自分の足で、自分の決めた道を歩いていくのだというメッセージが際立ちます。そこに美優さんの凛々しい表情が加わることで、他人の敷いたレールではなく、自分の道を進むのだという思いの強さも表現されています。

 

歌詞について

    最後に楽曲、特に歌詞に注目したいと思います。音については完全に門外漢でからっきしなので、今回は触れません。

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    まず歌い出しが桐生つかさから始まるのですが、これ製作側が気に入ってるんですかね。Life is HaRMONYに近しいものを感じます。今回のユニットを組むにあたってLiHがつかさに与えた影響はOPコミュからも読み取れます。Life is HaRMONYも私が個人的に好きな楽曲の1つなので満点ですね。歌い出しの歌詞の「夜のメトロ」については前項で  触れたので特にそれ以上のことはありません。

 今回イベントで聴けたものはゲーム版ということでフルになって歌いわけで変わる可能性も否めないのですが、とりあえず今回のバージョンで美優さんが歌っていた箇所で文脈が強い歌詞は、「自分の靴で 歩いていくの」という部分です。ヒールの折れた靴でもお仕着せの靴でもなく、自分の選んだ靴で歩いていくという、自立した強い意思を感じます。

 他に気に入っている歌詞は「誰にも靡かない 私の思うまま着飾って ヒール鳴らせ」という部分です。 これも先述の内容とかぶる部分が非常に多いのですが、確固たる自分という存在を前提としているのが好きです。私が物事の良し悪しを判断してそれに基づいて行動する、という点では『full up』の内容に通ずる部分もありますね。そしてそのような自分という存在を音を鳴らしてアピールするという、今までの積極性の無かった美優さんからは決して出ることのないような歌詞ですね。

 

これからの三船美優はどうなるのか?

 さて、ここまででこのイベントまでの美優さんについての大まかな振り返りができたと思います。しかし、三船美優というキャラクターの根幹に関わりながらも触れられなかった事項があります。それは、美優さんがこれからどのようなアイドルを目指すのか、ということです。

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 [こころ、酔わせて]のカードコミュで、美優さんは人を導くのではなく、想いを受け止めて寄り添えるようなアイドルになりたい、と言っていました。佐藤心が太陽のようだとすれば、自分は月のようなアイドルになる、と。これは彼女の活動の基本方針になっていて、『印象』のコミュでもこの方針を再確認する描写がありました。自分の今までの経験を踏まえれば、色々な想いに応えられるようになる、と美優さんは考えてきました。

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 しかし、今回のカードの親愛度演出では、なりたい自分が何かまだわかっていない、と言っています。確かに、今回のイベントは「想いの行き場のようなアイドル」とは少し違ったもののように思えます。月のように他人の光を反射することで輝くのではなく、自らの存在を自らでアピールするようなユニットとそれとの間にズレがあるように感じます。

 本当にそうでしょうか。確かに美優さんは強くなりました。しかしそれで他人に寄り添う能力を無くしたでしょうか。答えはもちろんNo。先の画像には続きがあります。

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 これまでの足跡は覆されることがないものだと言っています。その足跡にはこのユニットでの活動はもちろん、アイドルになってから今日まで、さらに言ってみれば生まれてから今日までの足跡も含まれているでしょう。美優さんが人に寄り添うことができる、というのは自分の不器用な性格からだと言っていましたが、人に寄り添う優しさとそのための経験は今回のユニット活動で消えることはありません。寧ろ自信のついた今の美優さんだからこそ、より人に寄り添うことができるようになったのではないでしょうか。心にゆとりのない状態では他人に気をかける暇などありません。今回のユニット活動は美優さんに自信を与え、そのことで目指すアイドル像にまた一歩近づけたのではないでしょうか。今までの足跡を再度振り返れば、美優さんも自分が目指していたアイドル像に気付くことができるはずで、その上でどのような道に進むのかも注目ですね。

 

 これからの美優さんについて次に何かあるとすれば、ソロ2曲目でしょうか。乙倉悠貴ちゃんのがついに発表されたことで、光が見えてきました。Last Kissが今回のイベントで割と完成した感じがするので、次の曲が本当に楽しみです。

 これからの美優さんのさらなる活躍を願って、結びとしたいと思います。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

12/22追記:M@STER VERSIONの歌詞について

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本日、レッド・ソールのCDが発売され、M@STER VERSIONもお披露目となりました。私も早速買ってきて、歌詞カード片手に聴きました。2番の歌詞について、星輝子役の松田颯水さんがTwitter

「レッドソールが似合うヒト」とはこんな風に世界を観るのか…最高! て歌詞がくる

https://twitter.com/DApanda323/status/1466724383716970499?s=20 より

とおっしゃっていたので、ある程度自分の中でも歌詞について予想を立ててはいました。しかし、実際の歌詞は私の予想を遥かに飛び越えてよく書かれていて、ここまで伸びる!?と驚かされました、というか狂いました。歌詞が本当に良かった。

 ここからは気に入った歌詞を細かく見ていこうと思います。ただし、今回はブログの趣旨に併せて三船美優さんの文脈だけで読みます。もちろん他の3人についての読み方もできる歌詞なので、お前それだけ?という批判はここで避けときます。

 

孤独を紛らわせるような 

流行りのアクセサリーはいらない

 

 孤独を紛らわせるようなアクセサリーといえば、美優さんが背伸びするために履いてたピンヒールです。大人になりきれない=周りから置いてけぼりをくらう孤独感と解釈できます。その焦りから自分には合わないピンヒールを履いていました。しかし、もはや美優さんにはそんなものは必要ない。彼女には情熱を示す赤いヒールがあるのだから、ということですね。

 

夜に映った夜景の宝石を 

ドレスの胸に 散りばめるの

 流行りのアクセサリーを捨てて、代わりにアクセサリーにするのは「夜景の宝石」だと言っています。1番の歌詞でも出てきた「街明り」などが「夜景」に該当します。「街明かり」とは、街灯を指すこともあるでしょうが、その一方でビルの光なども「街明かり」に当たります。そしてビルの光は、そこで仕事をしている人々がいるからこそあるもので、オフィスワークを象徴しています。オフィスワークをここで強調したのは、かつては美優さんもそれにそれに従事しており、「街明かり」の一部だったことを言いたいからです。

 しかし美優さんはそんな「街明かり」=「夜景」はドレスに散りばめて自身を引き立たせるためのアイテムとしています。もう言いたいことはわかると思うのですが、過去があったからこそ今輝くことができていて、過去は今の自分を引き立たせるアイテムにしているんですね。コミュの中でOL時代のスキルを活用している姿が殊更に描かれていたのは、「夜のメトロ」やこの「夜景の宝石」につなげるためだったんですね。

 

地位と夢 名声と恋愛 

全て欲しがっても...いいんじゃない?

 ここで気にかかるのが「名声と恋愛」の特に「恋愛」の部分です。突然恋愛の話?となるような気がしますが、美優さんの文脈で読んでみるとそこまで唐突ではなく、むしろ欲しかった要素なのでここの歌詞かなり好きです。

 じゃあなんで突然恋愛の話が始まったの?というのに答えていきます。ただ、ここからの話かなり諸説あると思いますし、不快に感じる人もいるかもしれないのでご了承ください。

 質問に対する答えは、美優さんという人間全体を見た時に美優さんが向かっている方向がアイドル活動だけではないからです。美優さんがPに対して依存していて、そこから徐々に脱却していった、という話をしたと思います。しかし、美優さんがPに対して向けている感情がこれ以上薄れることはないと思います。むしろ好意はますます募っていくのではないでしょうか。これには美優さんの幼少期が関係してきます。

 美優さんは親の都合で転校が多かったと話していました。私(筆者)も転勤族だったのでわかるのですが、幼少期に転校を繰り返していると何もかもを打ち明けられるような友人ができないんですね。お前がコミュ障なだけじゃね?という意見、ごもっともです。しかし、美優さんも初対面の人には見た目(怒っているように見える顔立ち)から敬遠されがちで、さらに自発的にコミュニケーションを取ることにに対して明確な苦手意識があります。ただでさえ友達を作るのが苦手なのに、苦労して作った友達も転校となればさよなら。苦しいです。

 そんな彼女の拠り所になっていたのがペットのゴールデンレトリバーだったと思います。犬などの動物は自分から愛情を向ければ懐きという形で愛情が返ってくることが多いです。美優さんの飼っていたゴールデンレトリバーちゃんも例に漏れず美優さんに懐いていたようでした。ペットは飼い主から離れることはありません。逃げたら死ぬので。そういった意味で美優さんが深い愛情を注ぐことができたのがゴールデンレトリバーちゃんだったわけです。

f:id:kn_imasp:20211221183715j:plain←実はこの時点で黒セーラー服だって明かされてた

さらに、画像のように物理的にも寄りかかれるのがゴールデンレトリバーです。ここからも依存的ともとれるようなペットへの愛が読み取れます。そしてこれは幼少期に各地を転々としていたことが関係している、ということです。

 そしてこのように何かに対して裏切られることのない愛を注ぎたいという気持ちは美優さんの中に残っています。それはペットを新たに飼いたいという言葉と、Pに対して自分を預けるような発言に表れています。自分を預けるといっても、依存ではありません。決して自分から離れていくことのないPに対しての信頼と、それから好意。どこに進むかは美優さん自身が決めますが、その隣には必ずPがいる。そのPに向ける好意が恋愛感情に転じていくこともありえます、というか言葉の節々からそれを匂わせてきています。その要素の反映が「名声と恋愛」の「恋愛」にあたる部分なわけですね。レッド・ソールのコミュの中では1人で歩いたらそれを認めて褒めてほしいと言っています。そして1人で歩ける自分になることが、Pの隣で俯かないための一歩だと言っています。支えはいらないけど、隣にはいてほしい。この関係性を上手く歌いこんでいると思います。

 

いつしか朝が来て この時間(とき)は過去となる

ドレスから着替えたら  私はまた新しい明日を生きるの

 「朝」と「この時間」とは何を指しているのでしょうか。ここでは2通りの解釈ができると思います。

 まず一つ目の解釈は、「この時間」=この曲のパフォーマンス、「朝」=この曲のパフォーマンスの終わりだとする解釈です。

 この曲の中では「夜のメトロ」や「真夜中のバラ」など、夜という時間が何度も強調されています。夜という設定がflamme martiniの妖艶な雰囲気を醸造しており、レッド・ソールという曲の雰囲気も作り出しています。「ドレス」もこの曲のためのものであり、「新しい明日」は他のユニットやソロでもパフォーマンスと捉えることができます。

 もう一つの解釈は、「この時間」=アイドルとしての活動、「朝」=アイドル活動を辞めた後とする解釈です。

 ここで美優さんにとってアイドルとは、手段であって目的ではなかったということが関わってきます。アイドルが目的である人物としては佐藤心さんや服部瞳子さん、白菊ほたるや長富蓮実などが挙げられます。アイドルに対して強い憧れを持っていて、それ以外の生き方ができないような人たちです。その一方で美優さんはスカウトされてから【こころ、酔わせて】の特訓コミュまでなりたいアイドル像がありませんでした。社会人をしていた頃もそれ以前もアイドルに対して強い憧れはありませんでした。アイドルを始めた理由は、スカウトされたから。1人では立つことさえままならない状態を脱して人前に立つことを当面の目標としていました。そしてそこから、支えてもらいながら、背中を押してもらって、そして1人で、歩いていくこと。それが目標であって、必ずしもアイドルとしてそれを達成する必要はありません。ただPが仕事としてできるのは、アイドルとして美優さんに自信をつけてもらってそれを実現してもらうことです。だからアイドルは手段であって目的ではないという言葉を使いました。

 こう考えてみると「ドレス」はステージで着る衣装ですし、「新しい明日」はアイドルではなく普通の女性としての第二の、新しい人生として読めます。26歳という年齢から考えてみても、いつかはアイドルを引退することがそこまで不自然ではないものとして読めてしまいます。しかし、ただの引退文脈だけでは終わらないのがこのレッド・ソールという曲の素晴らしさです。次項でそれを見ていきます。

 

いつの日もバラのように 美しく気高く咲きたいから

媚びない 流されない 私の思うまま歩いていく

風を切って ヒールを凛と鳴らせ

 「いつの日も」という言葉が肝になってきます。「この時間」だけでなくどんな時間でも、どんな季節でも、ということですよね。ここでも先程の2通りの解釈に沿って読んでいきます。

 まずは「この時間」をこの曲のパフォーマンスの時間だとする解釈から。そうすると「いつの日も」とはflamme martiniとして活動しているときも、そうでないときも、という意味になりますね。こう考えると。「流されない」ことによってアイドル三船美優さんの持つ魅力がさらに高まっていくことが期待できます。

 『印象』で自分の中にたくさんの色があることを確認した美優さん。ただ、色があるだけでは何の意味もありません。美大生のように芸術を介してその人の内面を見透かすことのできるような一部の人には必要ありませんが、そうでない人には色を目に見える形=パフォーマンスで表現する必要がありますね。となると、当然その手段も非常に大事になってきます。その手段を主体的に選択していき、凛とした姿勢で魅せることができるバラのように咲きたいと言っているのですね。お仕着せの仕事と自分でこだわり抜いた仕事では熱量も質も変わってくるでしょう。そこを高めていこうと言っているのだと思います。

 では「この時間」をアイドルとして活動する時間として解釈した場合にはどうなるでしょうか。「いつの日も」という言葉はアイドルを辞めてからの人生のどの瞬間においても、という意味に置き換わります。しかし、アイドルを辞めてもアイドルをする前の状態に戻るわけではないとここの歌詞が読めてきます。

 流されやすいことや主体性の無さがアイドル初めたての頃は目立っていました。そして美優さん自身もそのことには自覚的で、そんな自分のことを嫌っていましたね。しかしアイドル活動を通じて美優さんは自分の選択を承認してもらい、そしてその行動に結果が伴うという経験を何度も味わうことになります。レッド・ソールのイベントコミュでは誰かに決めてもらったり頼りっきりになるのではなくて、自分がいいと思うものを選んでそれを提供しようとする姿を見せてくれました。まさに「私の思うまま歩いて」いるわけですね。アイドルは目的ではなく手段だと言いましたが、この状態こそが美優さんの初期の目的であって、それが果たされた今(なりたいアイドル像が無ければ)アイドルを引退しても極論問題無いわけです。だからこそこのような読み方が成立するわけですね。引退文脈で読んでいくと、美優さんが最初に持っていた目標を達成したことが殊更強調されて読むことができます。

 では、本当に美優さんはアイドルを引退するんですか?そうはならないでしょう。一度貼りましたが、再度重要なセリフを貼ります。

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 美優さんはまさに今、なりたい自分を主体的に模索している状態であり、その自分の歩みに対しても非常に肯定的なんです。初期の目標を達成して、そこからアイドルとして何者かになることを目指そうとしているのです。そんな彼女が今アイドルを辞める?引退として読めるのは、このレッド・ソールという曲が初期の美優さんの目的を達成した、第1章の最後のページだからであって、それは同時にこれからを期待させてくれるページでもあります。歌詞を一つ目の解釈で読んだ時に見られた、進化していった三船美優さんの姿がこの曲で得られたものです。ここから三船美優さんの物語の第二章が始まるんです。ソロ2曲目にjewelries004。これからますます伸びていくであろう美優さんの成長に期待が止まらないです。

 とりあえずは来月末の10th沖縄公演の開催とパフォーマンスの成功を祈って、追記の結とします。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。レッド・ソール買ってくださいね。買え〜!!!